『リチャード・ジュエル』 英雄から容疑者へ。あなたならどうする??
2020年1月17日より公開された、クリント・イーストウッド監督作品『リチャード・ジュエル』観てきました。
近年のイーストウッド監督作としては定番の”実話物”です。
リチャード・ジュエル(2019)
監督:クリント・イーストウッド
出演:ポール・ウォルター・ハウザー
オリビア・ワイルド 他
感想
派手さはまったくなく、地味な映画ですが見て損はない良作。
そして、とても考えさせられる作品です。
もしも自分が「リチャード・ジュエル」の立場になってしまったら?
また逆に弁護士「ワトソン・ブライアント」だったら?
FBI捜査官だったら、こんな捜査をする必要があるのだろうか?
新聞記者なら?リチャードの母親「ボビ」なら・・・?
観ている間中、この冤罪事件に憤りを感じつつも、どうやってこの状況を抜け出すことが出来るのかと、考えずにはいられない2時間。
そして無実の人間が、間違った情報で袋叩きにされるメディアリンチの恐ろしさ。
それでも、最後は風通し良く〆てくれて観た後はホッと一息つく、そんな映画です。
実際あった爆弾事件
この映画は実話を元に作られています。
1996年、アトランタオリンピック。
会場近くの公園を警備していたリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)はベンチの下に不審なリュックを発見します。
公園ではバンドのライブが行われていて、大勢の観客。
リチャードは万が一の事態を想定して、警官に連絡、人々を避難させようとします。
警官はただの落し物として処理しようとしますが、リチャードはそれを止め「正規の手続きをするべきだ」と言い、爆弾処理班が呼ばれます。
その結果、そのリュックには実際に爆弾が仕掛けられている事が判明し、公園の観客を避難させますが、・・・爆発。
死者2名、負傷者100名を超える大惨事となってしまいます。
爆弾を発見したリチャードは多くの人を救った英雄として報道されますが、ある新聞の記事で一転、容疑者へとされてしまいます。
自宅の周りには四六時中マスコミが群がり、FBIはリチャードを犯人に仕立て上げるかのように、尋問し、書類に騙してサインをさせようとし、自供させようとします。
FBIの捜査に疑問を感じたリチャードは、
「弁護士に電話させてほしい」
と、昔に面識があったワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)に連絡をとります。
見た目や思い込みよる偏見の怖さ
リチャード・ジュエル
リチャードは見た目は太っていて、頭もあまり良さそうではありません。
かといって、良い人というわけでもなく、性格にも少しクセのある変わり者。
ワトソンと出会った職場では、ゴミ箱の中身をチェックしていたり、勝手に机の引き出しを開けていたり・・・、別の職場では正義感が強すぎるためかトラブルが絶えずクビになる始末。
実話でリチャードは無罪であると解っているのにもかかわらず、映画を観ている最中、「本当に大丈夫かいな・・・」と心配になります。
もしもリアルタイムでこの事件の報道を見たら・・・、リチャードが犯人なんじゃないか?と疑ってしまう怖さがあります。
そんなリチャードですが、ラストではビシっ!!と決めてくれます。
ぜひ本編を観て頂きたい。
見事にリチャードを演じたポール・ウォルター・ハウザーにも拍手です。
弁護士ワトソン・ブライアント
そんなリチャードを助けることになるのはサム・ロックウェル演じる弁護士のワトソン。ふたりは以前の職場で面識があったというくらいの関係で、特別親しかったわけではありません。
しかし、ワトソンはリチャードの弁護を引き受け、マスコミやFBIと戦う事になります。
リチャードはワトソンの指示に従わなかったり、部屋からは大量の銃が出てきたり、事件現場から証拠品を持ち帰っていたりと・・・不利な状況に陥っていきます。
出典:IMDb: Ratings, Reviews, and Where to Watch the Best Movies & TV Shows
もちろん”無罪”だという確信はあったにせよ、見限ってしまってもおかしくない状況でワトソンは最後までリチャードを信じ弁護を続けます。
世間の疑いの目とは関係なく、しっかりとリチャードと向き合った頼もしい存在でした。
そして何といっても、サム・ロックウェル!!
今回も良かったですね。こういうどこか飄々とした役が良く似合います。
私だけかもしれませんが、今回のサム・ロックウェルはクリント・イーストウッドに表情とかが似てるなぁ、という印象を受けました。サムが意識していたのか、偶然なのか。
イーストウッド監督がもう少し若かったら自分でやっていたかもしれませんね。
サム・ロックウェル好きなら、個人的に『月に囚われた男』を推しておきたい。
新聞記者「キャシー・スクラッグス」
オリビア・ワイルドが演じたアトランタ・ジャーナル=コンスティチューションの女性記者「キャシー・スクラッグス」についても言っておかねばなりません。
まず、この映画は実話を元にしていて、この新聞記者のキャシーも実在の人物でした。
2001年に亡くなられたようです。
映画内で、彼女はFBI捜査官に対し「色仕掛け」を行い情報を聞き出す場面があります。
しかし、実際にはそのような事はなかったとアトランタ・ジャーナルは否定しています。
実際のキャシーさんはもう亡くなられているわけですし、わざわざそのような誘惑する描写をする必要はなかったのではないかと思います。
この映画が逆にメディアリンチをしている事にもなりかねず、残念です。
映画内では後半にはリチャードは犯人ではないと気づき、母親ボビの演説に涙を流し、自分がリチャードの記事を書いたことを後悔します。
演じているオリビア・ワイルドは良かったです。
まとめ
というわけで、派手さはないけど考えさせられる映画でした。
冤罪、偏見・・・なぜこういう事が起きてしまうのでしょうか?
母親役のキャシー・ベイツも良かったし、問題のFBI捜査官を演じたジョン・ハムも良いですね~。
あとワトソン・ブライアント弁護士の事務所のナディアも個人的にすきでした。
ワトソンは完全に彼女に頭が上がらない感じがおもしろい(笑)
後に二人は結婚したようで、それで二人の子供をリチャードの母親ボビが面倒をみることが、なんてゆう微笑ましいエピソードも。
とにかく、サム・ロックウェル好きならお勧めです!!
見てる最中に思い出したのがこちらの邦画。
もし自分がこの状況になってしまったら・・・と考えちゃいますね。