ryokamizuhara’s diary

とある書店員の雑記。人間関係の悩みや、書評、映画、そしてBach。5歳女児の父。下手っぴギターが趣味。

ヨハン・セバスティアン・バッハ その3 インベンション 第1番 BWV772


J.S.バッハインヴェンションとシンフォニア 全音ピアノライブラリー

バッハの音楽がどんな音楽なのか?

という事を知る上で一番わかりやすいのがこの曲だと思います。

 

インベンション 第1番 ハ長調 BWV772(~7番まで)

ピアノで弾かれることも多いですが、

チェンバロの響きが美しすぎるのでこちらをリンクさせていただきます。

(まぁ、バッハの時代はまだピアノが発明されていませんでしたけど)

 

まずこのインベンションという曲はふたつのパート(2声)で書かれていています。

それぞれを上声と下声(鍵盤的には右手のパートと左手のパート)といいます。

 

つまり右手と左手が別のメロディーを弾いているのに

それがひとつの曲にまとまっているイメージです。

 

現代の音楽とは少し違う作曲方法です。

現代音楽は、ものすごーく簡単に言ってしまえば、

左手でコード(和音)を弾き、右手でメロディーを奏でるというイメージです。

またはギターで、ジャジャーンと伴奏して歌う、弾き語りみたいな感じです。

 

バッハの音楽はそれぞれのパートが独立したメロディーを奏でています。

インベンションは2声ですが、シンフォニアという3声のものもありますし、

フーガなどでは4声、5声もあります。

 

こういった作曲法を「対位法」と言います。

対位法 - Wikipedia

 

そこで、なぜこの「インベンション第1番」

バッハの音楽を知る上でわかりやすいかと言えば、

 

この対位法により作曲された二つのメロディーが、

いわゆる「バッハ的」な音楽の最もシンプルな形と言ってよいからです。

 

とにかくまずは楽譜をご覧下さい。 

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インベンション1

 どうでしょうか?

私は最初にインベンションの楽譜を見たときに、

「なるほどそういうことか!!」

と感動しました。

 

バッハはいわゆるポップス音楽とはまったく作りが違い、

どういう基準で作曲しているんだろう?

というのがずっとわからなかったのです。

 

例えば今の音楽って大体こんな感じです。

 

イントロ(またはサビ)→Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→サビ→アウトロ

 

みたいな感じです。

 

もちろんクラシックとはジャンルが違うので当然ですが、

メロディ的にも、構成も全然違うんですよね。

そこで楽譜を見ると「なるほど!!」と。

 

細かいことはおいといて、ともかく一番大事なのは

で囲ってある「主題」という一区切りの短いメロディです。

この主題が一曲の中に何度も出てきます。

 

つまりこの「主題」が曲の主軸となり、あとは比較的自由に展開しています。

(つまり「Aメロ→Bメロ→サビ」みたいな流れではない)

 

そしてで囲ってあるのは「主題の反転形」で、

例えば、主題が「ドレミ」という形であれば、反転は「ミレド」となります。

つまり青で囲っている部分は主題から生まれた別の形です。

これが、上声と下声に次々と現れます。

 

またで囲ってある部分は「主題、もしくは反転形と対になる旋律」です。

例えば上声が主題のとき、下声は対になる旋律が当てられています。

 

イメージとしては、こういうピースがひとつずつ当てはめられている感じです。

そう、簡単に言ってしまえば「パズル」的な作りをしています。

そして、それが決して適当に作られているわけでなく、

音楽的な美しさやリズムや和音を生み出している事にバッハの偉大さが現れています。

 

この作りをもう少し突き詰めていくと、バッハが得意とした「フーガ」ですし、

また、主題を上声と下声で繰り返す箇所は「協奏曲」ともいえます。

 

私が日頃感じることのひとつに、ドラムもベースもないのに、

バッハの音楽はリズム感が強いです。

余談ですが、私はドライブでバッハをノリノリで聞いております(笑)

しかも歌ってます(笑)

下手なロックより乗れますね。(多分私は異常ですが汗)

 

それはなぜかと言えば、バッハは符割がメチャメチャ細かい事が多いです。

8分音符、16分音符は普通ですし、32分音符のことも多々。

これがこれがドラムのハイハット的な役割を持っており、

そしてそれと対になるメロディーは、

4分音符などの少し長い音符の組み合わせになる事が多いです。

これはバスドラムやスネア的な感じと捕らえると、メロディー付ドラムともいえます。

 

なおかつ、和音的にも成立していて、更に転調を何度も行います。

長調の曲も必ず短調へ変わりますし、短調なら長調を通ります。

こういう変化が、ふと切なかったり、あったかく感じたり、

とにかく表情豊かなんですよね。

 

私の個人的な意見として、

「主題」=「サビ」

とするならば、バッハは常にサビです。

でも、くどくなく、それがとても心地よいのですね。

 

いかがだったでしょうか?

少しでも、バッハ的なものが伝わっている事を願っております。

 

ちなみに、インベンションは15曲(ハ長調ハ短調・・・ロ短調まで)あり、

3声の「シンフォニア」も同様に15曲あります。

こういうところもバッハ的。

 

興味が湧きましたら是非、他の曲も聞いてみてくださいね。


CD EFCD4168 バッハ/インベンション (全音楽譜出版社刊)準拠